御企第  342  号

平成12年11月30日

岐阜県知事
 梶原  拓  様
 

御嵩町長 柳 川 喜 郎

  
御嵩町における産業廃棄物処理場、及び産業廃棄物処理場計画について(照会)


 標記について、小職からの照会に対し、平成12年10月27日、ご回答をいただきましたが、ご回答をいただけなかった部分等がございますので、下記のとおり再度、照会いたします。
 ご回答のほど、よろしくお願いします。

   

一、既設の安定型産廃処理場(大久後)について

1、当該安定型産廃処理場は「止むを得ないものと判断して」自然公園法関連の許可をされたとのことですが、実際には10年間も処理場として機能してきませんでした。

(1) 「止むを得ない」必要性、合理性はあったのでしょうか。現在でも「止むを得ない」とした判断は正しいとお考えなのでしょうか。

(2) 処理場として10年間も機能せず、ただいたずらに国定公園の風致 や景観に影響を及ぼしてきたことは、事業者の懈怠による結果なのか、あるいは許可が安易であったのでしょうか。


2、平成2年8月、当該安定型産廃処理場にかかる自然公園法関連の許 可をするにあたって、事前の総合的な自然環境影響調査に基づいて、許可の適否を判断されたのでしょうか。
同許可申請にあたって、「動植物調査報告」が添付されていますが、これは内容的にみて、「総合的自然環境影響調査」とは認め難いと思われます。この点について御見解をお示し下さい。
 ※参照‐環境庁「審査指針」昭和49年、同「審査指針の細部解釈」昭和50年

3、当該安定型産廃処理場に対する2年ごとの自然公園法関連の許可は、「形式上は新規許可、実質上は許可の更新」とのことで、あいまいでありますが、少なくとも形式上新規許可であるとすれば、平成6年4月1日の環境庁通知以降の許可は、どのような判断によって行われてきたのでしょうか。 

4、当該安定型産廃処理場にかかる自然公園法関連の許可には、当初から許可条件として、遮視木の植栽が義務づけられていますが、そのような遮視木の植栽、管理は実行されてきたのでしょうか。
 なお、第5回許可(平成10年10月30日)のさい、あらためて許可条件として遮視木の植栽場所が具体的に指定され、その後平成11年になって築堤にマツの幼木約10本が植栽されたことは確認されています。

5、当該安定型産廃処理場にかかる「国定公園特別地域内における土地の形状変更許可申請書」を寿和工業に「返却」されましたが、これは行政手続法第7条に規定する「拒否処分」と解してよろしいでしょうか。




二、計画中の管理型産廃処理場(小和沢)について

1、都市計画法関連について

(1) 都市計画法32条の「同意」「不同意」の回答について
 さきの照会でも述べたように、都市計画法第32条、同30条の規定によれば、「協議」、「同意」は開発許可を申請しようとするものと公共施設管理者との間の問題で、許可権者は開発許可を申請しようとする者に対し、申請に必要な公共施設管理者との協議の経過を示す書面、および公共施設管理者の同意を証する書面を取得するよう補正を求めるのが、本来の法的手続きと解されます。
 本件の場合、そもそも申請が到達した段階で、都市計画法の規定、及び行政手続法第7条の規定に基づき「相当の期間」を設けて、許可申請者に補正を求め、その結果を判断して「拒否処分」にするかどうか決めることが、本来の行政手続きだったのではないでしょうか。
 なお、建設省通達に基づき「法的処分を早くするための調整行為の一つとして」御嵩町に対し回答の催促をしたとのことですが、当該建設省通知はバブル経済期の地価高騰期の宅地開発の促進を目的としたもの(昭和62年通達)、あるいはバブル経済崩壊後の景気対策としての宅地開発促進を目的としたもの(平成6年通知)で、いずれも本件の場合とは主旨が異なるものと解されます。
 さらに、これらの通達は行政指導であり、上記の法的手続き、行政手続きが優先することはいうまでもないところです。
 また、「同意」、「不同意」の回答を求めることは、通達がいう「調整」には当たらないと解されます。

(2)許可申請の補正について

@指示書と補正について

イ、岐阜県は平成7年6月16日、寿和工業に対し、都市計画法に基づく開発行為の許可申請について、指示書(以下、指示書T)を交付し、申請内容について59項目にわたって「訂正整備」、「再提出」を求めています。
 また、「訂正整備後は必ず市町を経由の上提出して下さい」と明記しています。
 さらに、岐阜県は平成12年6月27日、寿和工業に対し、指示書(以下、指示書U)を再交付し、「当該指示書(指示書T)の交付から5年が経過した現在においても補正が完了していません」とした上で、「引き続き開発許可を受ける意志があるのであれば」訂正事項の早急な補正を指示しています。
 上記指示書の交付は、行政手続法第7条が規定する補正の求めと解釈されますが、それでよろしいでしょうか。

ロ、さきの御回答によりますと、補正未了となっている事項は、「都市計画法第32条同意書、協議経過書の添付以外に開発許可手数料の納付等未了事項」とあります。
 指示書Tで求められた補正が、その後どの程度行われているかは補正書類が御嵩町を経由していないため、よくわかりません。
 未了となっている都市計画法32条同意書、協議経過書とは、産廃処理場予定地内の御嵩町町有地にかかる御嵩町の同意書、協議経過書以外に、どのような事項があるのでしょうか。

ハ、「開発許可手数料の納付等」とありますが、手数料の納付は簡単に完了できる、いわばマイナーな補正事項と考えられます。
 その他の「等」とは、どのような事項でしょうか。

ニ、「八嵩林道管理者の御嵩町と八百津町の同意が必要であることを、事業者に口頭で伝えている」とのことですが、口頭で伝えたのは、いつのことですか。また、補正の求めは、書面でなくても口頭でよいのでしょうか。
 なお、八嵩林道の都市計画法第32条関連の扱いについて、御嵩町は寿和工業と「協議」したことはありません。

ホ、岐阜県は八百津町に対し、八嵩林道について都市計画法第32条の「同意」、「不同意」の回答を求めたことはありますか。

ヘ、岐阜県の「産業廃棄物の適正処理に関する指導要綱」によりますと、法定要件以外に、例えば、放流水がある場合には、放流地点から1キロ以内の河川の管理者、水利権者、及び漁業権者の同意を必要としていますが、こうした管理者等の同意を得るよう、補正を求めたのか、県から「同意」、「不同意」の回答を求めたのか、あるいは、すでに補正を完了しているのか、ご確認下さい。


A行政手続法について

 行政運営における公正の確保と透明性の向上を図る目的の行政手続法の第7条(申請に対する審査、応答)によると、「行政庁は申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに申請をしたものに対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、または当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない」とあります。

イ、本件の場合、指示書Tを交付したさい、「相当の期間を定めた」のでしょうか。

ロ、指示書Uにあるように、本件の場合、指示書Tが交付されてから5年が経過していますが、行政手続法の趣旨からも社会通念からも、5年間が「相当の期間」にあたらないと解されますが、いかがでしょうか。

ハ、指示書Tによる補正の求めに、事業者の寿和工業が5年間も応じてないとすると、許可にむけての、真摯、かつ、明確、継続的な意志表示が事業者に認められなかったと解されるのではないでしょうか。

ニ、岐阜県としても、5年間も徒過しないで、「相当の期間」後、行政手続法第7条の規定に基づいて、形式的要件の不備を理由に早期に申請を拒否処分にするべきだったと解されますが、いかがでしょうか。


(3) 御嵩町の「同意」、「不同意」回答と現計画の成否について

@ 平成9年8月8日、岐阜県知事から小職宛に、当該産廃処理場予定地内にある町道等公共施設の管理者として都市計画法第32条の規定に基づく同意をするか否か回答を求める文書が交付されました。
 それによりますと、「現計画の成否は、法令上は、町道等の管理者である貴職が都市計画法第32条の規定に基づく同意をされるかどうかにかかっている」とあり、あたかも、小職の同意のみが産廃処理場計画の成否を決めるかのような印象をあたえています。
 しかし、さきの小職の照会に対する御回答でも明らかになったように、小職の都市計画法第32条にかかる同意以外にも、産廃処理場計画の成否にかかわる事項、つまり許可申請の形式的要件の不備がいまだにかなりあると解釈できますが、この点、明確に御回答ください。

A なお、「現計画の成否」についてですが、かりに御嵩町の同意をふくむ都市計画法関連の許可申請の形式的要件が整ったとしても、他の個別法関連の許可、例えば、自然公園法関連の許可が得られない場合、現計画は成立しえないと考えられます。この点についてもご見解をお示し下さい。


2、自然公園法関連について

(1)環境庁通知(平成6年4月1日)について。

 同通知の扱いについては、これまで重ねて照会してきたところですが、さきの御回答によっても、理解することができません。
  同通知にこだわる理由は、
イ、同通知の扱いは、岐阜県の産廃行政、自然保護行政の根幹にかかわるものと考えられること。
ロ、岐阜県のとった経過措置2年は、全国都道府県でも例がなく、特異事例であること。
ハ、当該事務は市町村経由とする行政手続きのルールにそっていないこと。
ニ、以前の照会でも指摘したように、同通知が発せられた時期は、当該産廃計画に対する御嵩町の方針が「反対」から「やむをえない」に転 換していく過程で、御嵩町議会の審議が大詰めにきて重要な段階にあ ったこと。
ホ、かりに、同通知が速やかに御嵩町に周知されていれば、その後の産廃問題を巡る御嵩町の動向がかわっていた可能性があり、現在に至る「無用の混乱」は防げたと考えられること。
 以上であり、当方としては、「今の時点で考えてみますと、県として周知しておいたほうがよかったのではないかと考えている」との御回答では、とても納得はできません。現在は過去の累積の上に成り立っているのです。

@ なぜ、同通知を県で1年近く保留していたのか、かりに、経過措置や周知期間を設けることが妥当としても、1年間もの保留は不可解であります。御回答では理解できませんので、明確にお答えください。

A 「周知」の対象について、御回答がいただけておりません。
 県内部組織の県事務所だけに周知したとすれば、周知には当たらないのではないでしょうか。事業者に対しては周知したのではないでしょうか。当時計画が進行中の市町村のうち、揖斐郡各市町村のみ周知したのでしょうか。下呂町等にも周知していたのではないでしょうか。計画進行中の市町村のうち、御嵩町にだけ周知しなかったのではないでしょうか。これら不透明な点について、ご説明下さい。

B 県林政部長通知に関する揖斐県事務所決裁文書が可茂保健所の文書に添付されていたことは「配慮不足」とのことで、このこと自体粗漏な行政といわざるをえませんが、そのいわば「配慮不足」によって「紛れ込んだ文書」をもって、「御嵩町も御承知のことと認識」とは、いかにも解せない論理です。この点について、御見解をお示し下さい。

C 「林政部長通知と寿和工業の許可申請との関係はない」とのことですが、林政部長通知(平成7年3月20日)の2週間後に寿和工業の許可申請が御嵩町に提出され(平成7年4月3日)、県に送付(平成7年4月12日)されています。
 この間、経由機関である御嵩町が環境庁通知について全く知らされていない状態であったことは、いうまでもありません。
 また、当時県内に数件あったとされる廃棄物処理場計画のうち、寿和工業の許可申請の時期が突出して早かったことは事実です。
 奇妙な符合であります。ほんとうに林政部長通知と寿和工業の許可申請の関係はなかったのでしょうか。林政部長通知以前に、環境庁通知が寿和工業に周知されていたのではないでしょうか。

D 「事業者の経済行為を著しく侵害することになりかねない」ことを理由に設定された岐阜県特異の2年間の経過措置にもかかわらず、その経過措置期間内におこなわれた許可申請のうち、許可されたのは、白鳥町の郡上広域行政組合の一般廃棄物処理場と下呂町の産廃処理施設の2件のみと理解しています。
 このうち、白鳥町の一般廃棄物処理場は、立地規制の緩やかな県立奥長良川自然公園普通地域にあり、かつ、市町村の責任において地域 内処理が原則とされる一般廃棄物の小規模(0.8ヘクタール)処理場であり、また、積雪地帯という特殊事情があります。
 当該環境庁通知においても、一般廃棄物処理場については、特例の検討の余地を認めているところであります。したがって、白鳥町の事例はやむを得ない許可ということができるかと思います。
 いずれにせよ、国定公園特別地域内で、産廃の、しかも巨大処理場(40ヘクタール)である御嵩町における計画とは、全く事情が異なる 事例と解されます。
 また、下呂町の産廃処理施設は飛騨木曽川国定公園特別地域内にあり、環境庁通知の趣旨に反するものですが、その規模が0.19ヘクタールと小規模であること、また、最終処分場ではなく、建設廃材の中間処理施設(焼却、破砕)であることから、御嵩町における計画と同列 に論ずることはできないと考えられます。
 こうした事実関係からみても、環境庁通知の経過措置の主たる目的が、御嵩町における管理型産廃処理場計画の推進にあったのではないかと考えざるをえません。ご見解をお示し下さい。

E 同環境庁通知の経過措置を設けることについて、「環境庁と協議し、了解は得ている」とのことですが、環境庁自然保護局長、及び環境庁自然保護局計画課長は、いずれも国会答弁において、一般論としては経過措置の設定の妥当性を認めつつも、「岐阜県の措置について環境庁としては関知、関与していない」と述べ、協議や了解の事実についても肯定していません。
 ※参照‐平成9年1月16日、参議院決算委員会、及び平成9年6月6日、衆議院厚生委員会会議録

 環境庁と協議、了解があったとすれば、なんらかの記録があるはずです。お示し下さい。
 
F 平成9年6月3日の県環境局長の御回答(廃対第142号)によると、当該管理型産廃処理場の「水処理施設や洪水調整池を自然公園の第二種特別地域内につくることになっている現計画を当該区域にかからないよう計画変更する」とありますが、現計画とは、現在、申請中の寿和工業の許可申請と解されます。

イ、計画変更は、どこがおこなうのでしょうか。

ロ、県は寿和工業に対して、計画(申請)の補正を求めたのでしょうか。

ハ、計画変更はおこなわれたのでしょうか。

ニ、計画変更は産廃処理場の構造上、物理的、技術的に可能なのでしょうか。
  

(2)自然公園法施行規則(平成12年4月1日適用)について

 本件管理型産廃処理場の予定地は、飛騨木曽川国定公園第二種特別地域がふくまれていますが、国定公園特別地域内での工作物新築、土地の形状変更等の各種行為は、自然の風致や景観を保護するために、自然公園法によって知事の許可を必要とするなど、きびしく規制されています。
  本年4月1日、自然公園法施行規則(以下、規則)が総理府令によ って改正され、とくに特別地域内での各種行為に対する許可基準が強 化され、この許可基準は「本年4月1日以降に許可を行う場合に適用」されることになりました。
 さらに、主務官庁の環境庁は、この許可基準の「細部解釈及び運用 方法」(以下、解釈運用)を規定し、各都道府県知事に通知しました。
 本件管理型産廃処理場建設計画について、上記の新規制を照合して 勘案してみますと、以下の諸点から、許可はできないと判断しますが、御見解をお示し下さい。

@ 工作物の建築

イ、産廃処理施設など工作物の建築(法第17条第4項)については、きびしく規制されていること。(規則第11条第1項)
ロ、当該地域は「野生動植物の生息地又は生育地として重要な地域」であること。(規則第11条第1項、二、ロ、(2))
ハ、「当該建築物が重要な展望地から展望する場合の著しい妨げ」になる可能性が大であること。(規則第11条第1項、三)

A 土石採取

 産業廃棄物の埋め立てにあたっては、必然的に大規模な土石採取(法第17条第3項第3号)が行われるが、これはきびしく規制されていること。(規則第11条第14項、解釈運用第46項)

B 土地の形状変更
 土地の形状変更(法17条第3項第7号)については、廃棄物の埋め立てによるものは明確に禁止されていること。(規則第11条第20項第4号)
 但し書きの例外規定は、当該産廃処理場計画には該当しない。

C 植物の採取等

 当該地域には、絶滅危ぐ種のオオタカの生息が観測されており、植物の採取、損傷が規制されていること。(法第17条第3項第8号、規則第11条第21項第2号、解釈運用第61項)

D 共通許可要件

 国定公園特別地域内の工作物の建築(規則第11条第1項)、土石の採取(規則11条第14項第1号ハ)、土地の形状変更(規則第11条第20項第1号及び第5号)、植物の採取、損傷(規則第11条第21項第1号)は、いずれも許可要件として、「学術研究その他公益上必要であり、かつ、申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められるものであること」と規定しています。
 つまり、上記各種行為が許可される要件として、学術研究など公益的な性格をもっていること、それに、その場所以外の場所では目的が達成できないことの二つの条件が必要と解されます。
 しかし、当該産廃処理場が学術研究を目的としたものでないことはいうまでもないところです。
 また、当該産廃処理場建設が「その他公益上必要な行為」にも該当しないと解されます。(解釈運用第2項ロ)
 さらに、当該産廃処理場が「申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないもの」ではないことも、明かであります。(解釈運用第3項)
  
E 特別地域内の産廃処理施設の禁止

 国定公園特別地域内での産廃処理施設の建設を規制する、もっとも重要、かつ明確な規定は、規則第11条第31項第2号、及び解釈運用第71項であります。
 規則第11条第31項第2号において、「共通の許可基準」として、「申請に係る場所又はその周辺の風致又は景観の維持に著しい支障を及ぼす特別の事由があると認められるものでないこと」とあり、かつ、解釈運用第71項においては、上記規則第31項第2号について、「国立公園及び国定公園内において自然公園法による許可を要する行為については、各種行為の区分に応じ、本条に定める審査基準を適用して判断されるべきことは当然である。
 しかし、当該行為が本条各号に掲げるすべての要件に該当する場合であっても、射撃場、オートレース場、産業廃棄物処理施設、ある種の工場の設置等、その行為による騒音、悪臭、ふんじん等の発生により当該行為地周辺の風致又は景観に著しい支障を与えることが明らかな場合等においては風致の保護の全体的な立場からその行為を不許可とする必要があるという趣旨である。」と明記しています。
 つまり、優れた自然の風致、景観の保護を目的とした自然公園法において、国立公園や国定公園内の開発や自然改変を規制する基本方針を定め、その施行規則においては、許される開発、自然改変の具体的要件を特例を認めつつ定めていますが、その解釈運用の共通認識として、「国立公園や国定公園の風致景観に著しい支障を与えることが明かな場合」として、産業廃棄物処理施設を特に例示して、「風致の保護の全体的な立場からその行為を不許可とする必要がある」としているのであります。
 したがって、国定公園特別地域内においては、産業廃棄物処理施設の設置は、裁量や判断の余地なく不許可とされるべきと解されます。
 なお、特別地域内の廃棄物埋め立ては、規則第11条第20項第4号において、許可されませんので、結局、以上を総括すると、本件産業廃棄物処理場建設計画は法的に成立しえないと考えられます。
 御見解をお示し下さい。


3、国土利用計画法関連の諸手続きについて

 上記については、これまで諸手続きに疑義があると指摘してきましたが、「直ちに虚偽の届出であると断定できないと考えている」、あるいは「直ちにそれが適当でないと断定できないと考えている」という御回答をえています。
  当方は断定したのではなく、疑問を呈し御見解をきいたものです。 また、「直ちにそれが虚偽、あるいは適当でないと断定できない 」としても、逆に、直ちにそれが正当、適当であるとの断定もできないと思います。
 いずれも御回答に納得したわけではなく、結局、適否の「断定」は 司法の判断によらなければならないと考えています。
 ここでは一例についてのみ、照会します。
 平成9年1月16日の参議院決算委員会において、国土利用計画法の主務官庁である国土庁の窪田武土地局長は国土利用計画法第23条の趣旨に関連して、「岐阜県側も当初から産業廃棄物処理施設をつくる意向を有しているということについても承知している節があったところでございます。
  本件届出に対します岐阜県の対応には必ずしも十分適切であるとは言えない面もあるというふうに考えております」と答弁し、岐阜県の御回答とは異なる見解を示しています。
 ※参照‐平成9年1月16日、参議院決算委員会会議録

 以上、国土利用計画法の「利用目的」に関する疑義について、再度、御見解をおきかせ下さい。


三、事業主体の信頼性について

1、 廃棄物処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法)の趣旨 に関連して

 事業主体の信頼性については、これまで重ねて疑問を呈してきまし たが、さきの御回答のうち、御嵩町長宅盗聴事件関連については、「プ ライバシーに関することなので県としてコメントできません」とあります。
 しかし、もっぱら公益にかかわる問題(産廃業者の社会的信頼性) について、公開原則の刑事裁判の有罪判決確定の公判記録に基づいて おこなわれた照会が、なぜ「プライバシーに関すること」なのか理解できません。
  廃棄物処理法は平成9年の改正で、処理業者の資質の向上と信頼性確保のため、許可にかかる欠格要件を強化しました。
許可権者であり、産廃業者に対する監督責任がある立場から、当該 事業者と暴力団員、暴力団周辺者との数々の密接な関係について、廃 棄物処理法第7条第3項第4号、及び第14条の規定を点検しつつ、産廃業者として好ましいことなのか、産廃行政への信頼性確立のためにも、明確なコメントをお示し下さい。

2、 廃棄物処理法第7条第3項第4号ホについて

 これまでの御回答のなかで、「当該事業者は、多治見市内において最終処分場を適切に運営してきた実績がある」(平成8年3月28日衛生環境部長回答)、「T社の代表者は、廃棄物処理法に定める欠格要件には該当していない」(平成9年6月3日環境局長回答)とあります。
 しかし、廃棄物処理法第14条第3項第2号によって適用する第7条 第3項第4号のホは、産廃業者の欠格要件の一つとして、「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」と規定し、産廃業者の資質及び社会的信用の面から不適格者の排除をはかっています。
 そこで、以下の諸点について、「その業務に関し不正又は不誠実な 行為をするおそれがある」に該当するかどうか、あるいは、好ましいことであるかどうか、事実関係についての御回答とともに、御見解をお示し下さい。
  
(1)寿和工業が運営する多治見(廿原)産廃処分場について

@ 寿和工業が平成8年まで発行、頒布していた企業案内パンフレット(以下、旧パンフレット)によると、廿原処分場の全景空撮写真の説明として、廿原処分場の規模について「1,200万m3の規模の大きさをごらん下さい」と記載し、さらにその欄外の「処分場面積および埋立量」の表においても、「埋立量1,200万m3、現埋立面積12万2、現埋立量100万m3」とあります。
 ところが、その後、印刷発行、頒布された寿和工業の企業案内パンフレット(以下、新パンフレット)によると、上記の「埋立量、現埋 立容量」の記載は削除され、「処分場面積」として、「社有地80万2、埋立面積17万6,1902」とだけあります。
 最近、寿和工業から多治見市に提出された回答によると、廿原処分場の埋め立て許可容量は135万1,012m3、本年3月末までの埋め立て 量は126万5,870m3とのことです。
 上記の事実から、以下のように、さまざまな疑問がでてきます。

イ、 廃棄物処理法第15条は、処理施設の許可申請のさいに、埋立量を 申請書に記載することを義務づけていますが、その埋立量が135万m3とすると、旧パフレットの「埋立量1,200万m3」は、誇大の不誠 実な表示ではないのでしょうか。

ロ、 既埋め立て量は、旧パンフレットが印刷された平成8年以前で、すでに100万m3とすると、本年3月末の126万m3との差、つまり、この数年間の埋め立て量は26万m3、1年あたり数万m3にすぎないこと になります。
 ところが、寿和工業は、廿原処分場のひっ迫を理由に廿原処分場の拡張を計画しているようですが、ほんとうにひっ迫しているのでしょうか。1,200万m3の容量があれば、少なくとも数十年は、ひっ迫しないと考えられます。

ハ、監督責任者の県として、上記旧パンフレットの記述の訂正を求めた事実はあるのでしょうか。

ニ、また、廿原処分場の容量、許可容量、既埋め立て量、容量ひっ迫の実情等を、どのように調査、把握し、指導、改善命令等をしてきたのでしょうか。


A 寿和工業は、廿原処分場内に「処理水の池」を設けて鯉を飼育し、あたかも処理水が安全であるかのように、処分場を訪れる見学者に説明するとともに、上記企業案内パンフレット(旧パンフレット)にも、「処理水の放流」と題して鯉が泳ぐ池のカラー写真を掲載し、処理水の安全性を広く強調していました。
 しかし、平成8年6月、「みたけ産廃を考える会」の会員らが廿原 処分場を視察したさい、寿和工業側の了解を得て採取した処理前の原 水と処理後の放流水(鯉の池の水)を専門家に依頼して電気伝導度等の検査をした結果、放流水は処理水ではなく沢水か井戸水であることが判明したとの報道がありました。
 また、同時期に読売新聞社がおこなった同様の検査においても、「放流水(鯉の池の水)は河川の水とかわらない」と判定されています。
 結果をえたとのことですが、その事実関係について御確認下さい。
 廃棄物処理場の処理水が安全であるかどうかは、その処理場、あるいは処理事業者の信頼性にかかわる重大な問題です。
 事実を偽って社会をあざむくような行為は、過失や手落ちとはいい難く、不正、あるいは不誠実な行為といわなくてはなりません。この点について御見解をお示し下さい。
なお、新パンフレットでは、上記の「鯉の池」の写真は削除されています。これは県の行政指導によるものでしょうか。


B 平成8年11月から12月にかけて、市民グループ「くらし、しぜん、いのち県民ネットワーク」が廿原処分場の排水状況を調査した結果、同処分場浸出液処理施設等に問題があることが確認されたため、岐阜県に調査をおこなうよう申し入れ、岐阜県は平成8年12月10日から三日間、多治見市などとともに調査をおこないました。
 その結果、岐阜県環境衛生部長は寿和工業に対し、同処分場浸出液処理施設に不備があったとして改善するよう勧告しました。
 この件は、市民団体の指摘があって初めて明らかになったもので、それ以前、それ以後もふくめて、「適切に運営してきた実績がある」ことに相当の疑問を感じざるをえません。
 こうした事実を公開することこそ、産廃行政に対する信頼感をたかめる結果につながります。以下について、御回答下さい。

イ、どういう「不備」があったのか、具体的に御説明いただきたい。

ロ、その後、処分場の管理は適切におこなわれているのでしょうか。

ハ、この改善勧告のさいに、前述の旧パンフレットの記載、写真についても訂正するよう指導をしたのでしょうか。


(2) 脱税行為について

  寿和工業は昭和62年、5億1,709万円にのぼる法人税の巨額脱税(法 人税脱税額全国二位)をおこない、法人税法違反で刑事訴追をうけ、 有罪判決が確定していることが明らかにされています。
 寿和工業はその後も、法人所得の申告漏れ等を国税当局から指摘され、重加算税をふくめた追徴課税をされたことが報道され、国会でも、この問題がとりあげられました。
 脱税はいうまでもなく、不誠実、かつ不正な反社会的行為で、当該脱税行為は、産廃処理を主たる業務とする寿和工業がおこなったものであります。
 当該脱税行為と上記廃棄物処理法第7条第3項第4号ホ関連について、厚生省の小野昭雄生活衛生局長は平成9年6月6日の衆議院厚生委員会で「当該脱税行為の悪質性や反社会性等の個別の事実を十分に勘案いたしまして、本条項の適用の可否を判断すべきものと考えております」と答弁しています。
 また、同委員会で、小泉純一郎厚生大臣は「暴力団関係者あるいは悪質な人がこのような業務に携わらないようなために欠格要件を設けているわけですから、そのような法の趣旨にのっとって注意深い配慮 が必要ではないかと思います」と答弁しています。
 ※参照‐平成9年6月6日衆議院厚生委員会会議録
 岐阜県は許可権者として、廃棄物処理法第7条第3項第4号に照らしつつ、個別の事案、つまり、当該脱税行為に対する有罪判決の内容、それに、その当時の寿和工業の本店移転、役員構成の変更等を「十分に勘案」して、あるいは「注意深い配慮」をして、「本条項の適用の可否を判断」されたのでしょうか。
 また、その後の寿和工業の納税状況が誠実で好ましいものであったか、御見解をお示し下さい。

  以下、若干の意見を付記します。

 御嵩町の産業廃棄物処理場問題は、すでに10年余の長い経過をたどってきました。この間、御嵩町では、まさに岐阜県が懸念を示していた「無用の混乱」が長期にわたってつづいてきました。
 どうして「無用の混乱」がつづいてきたのか、平成8年当初以来、小職が提出してまいりました「疑問と懸念」等の書面を、お手数ながら、再読していただければ、判然としてくると思います。
 その数々の疑問や懸念を解消し、同時に、混乱の原因を正さないかぎり、望ましい問題の解決はありえません。
 もとより、日本は法治国家であり、公正な法的手続き、適正、かつ公平な行政手続きにのっとって、不条理や理不尽を排しつつ、問題を解決しなければなりません。
 目前にせまった21世紀は、「環境の世紀」です。
 環境保護は、いまや、時代の潮流であり、時代の要請でもあります。このことは、名古屋市の藤前干潟問題、愛知万博問題など、最近、近辺でおきた事例をみても、理解できるかと思います。
 以上の基本的見地に立ち、早期に問題解決をはかりたいと考えていますので、なにとぞ御理解を賜りたいと存じます。

以 上