御農林耕第336号

平成12年 9月18日

岐阜県知事  梶 原  拓 様
 

御嵩町長 柳 川 喜 郎

 

意   見   書


 飛騨木曽川国定公園特別地域内行為許可申請について、次のとおり意見を付して進達します。

 

申請者の住所及び氏名 岐阜県可児市広見一丁目47番
寿 和 工 業 株 式 会 社
代表取締役  清 水 道 雄
申請受付年月日 平成12年8月18日
公園計画との関係 第3種特別地域
行為内容及び施行方法
の適否
・別紙意見のとおり
行為地の現況及び位置
の適否
・別紙意見のとおり
風致景観に及ぼす影響 ・別紙意見のとおり
拒否及び許可の場合の
条件等に関する意見
・別紙意見のとおり
 備      考  



 


許否及び許可の場合の条件に関する意見

以下の理由により、本件許可申請は適当でないと判断します。

  1. 当該安定型産業廃棄物処分場は、ほとんど全域が飛騨木曽川国定公園第三種特別地域内にあり、もともと自然公園法の趣旨及び自然環境保護の趣旨に反するものである。
    (参照) ・昭和50年3月19日 環境庁自然保護局長通知
      (環自企第148号)
    ・平成6年4月1日 環境庁自然保護局
     計画課長、国立公園課長通知
      (環自計第62−1号
      (環自国第152号)
    ・平成12年4月1日施行 自然公園法施行規則
      (総理府令第23号)
    ・平成12年4月1日適用 自然公園法の行為の許可基準の細部
    解釈及び運用方法
      (環境庁自然保護局長)
  2.  同上「自然公園法施行規則」、及び「自然公園法の行為の許可基準の細部解釈及び運用方法」によって、国定公園特別地域内の産業廃棄物処理施設の設置、及び産業廃棄物の埋め立ては明確に禁止され、平成12年4月1日以降に許可を行う場合に適用される。

  3.  同上「環境庁自然保護局計画課長、国立公園課長通知」に「国立、国定公園区域内においては、これまで産業廃棄物処理施設の設置はほとんどなされておらず」とあるように、当該安定型産業廃棄物処分場の存在は全国的にみて稀有、かつ特異な事例である。
     また、当該安定型産業廃棄物処分場は岐阜県内の自然公園(国立公園、国定公園、県立自然公園)区域内では初の産業廃棄物処分場である。こうした産業廃棄物処分場の存在を継続させることは、自然公園行政、自然環境保護行政、及び産業廃棄物行政にとって、悪しき前例と大きな汚点を残すことになる。

  4.  当該安定型産業廃棄物処分場に係る「国定公園特別地域内の各種行為」の許可申請者は当初「埋め立て事業期間は10年」と予定していたにもかかわらず、この10年間、当該安定型産業廃棄物処分場はほとんど機能していない。
     これには正当かつ合理的な事由は認められず、いわば「権利の上に眠る」状況が10年間もつづいたことになり、法理上、これ以上、土地の形状変更や埋め立て期間の延長を認めることは妥当ではない。

  5.  当該安定型産業廃棄物処分場の設置に伴い、すでに大規模な土地形状の変更、処理施設など工作物の設置、樹木の伐採等によって、10年近くも国定公園特別地域の風致や景観に影響を及ぼしており、今後さらに許可申請者が計画しているように10年間も土地の大規模改変、産業廃棄物の埋め立て等が続行された場合、風致や景観への影響はさらに甚大になるおそれがある。

  6.  当該安定型産業廃棄物処分場は、自然公園法施行規則第11条に規定された「申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することが出来ないと認められる」ものに該当するとは考えにくい。
     この点は「自然公園法の行為の許可基準の細部解釈及び運用方法」に照合してみれば、おのずから明らかである。

  7.  本件許可申請書には、「イ、風致景観の特質」、「ロ、自然的、社会経済的効用」、「ハ、行為影響予測写真一覧表」、「ニ、周辺における公園利用の実態」が添付されているが、内容は形ばかりのもので、自然公園法施行規則第10条第3項に規定された添付書類とは認め難い。

  8.  御嵩町が本年実施したオオタカ生息調査では、当該安定型産業廃棄物処分場周辺で、絶滅危惧種T類に指定されているクマタカ、絶滅危惧種U類に指定されているオオタカの活動が観測されている。
     今後、当該地域周辺で土地形状の大規模改変、産業廃棄物の埋め立て等がおこなわれた場合、こうした希少生物の生存が脅かされる可能性が極めて大きい。
     自然公園法施行規則第11条の規定からも本件許可申請に係る行為は妥当ではない。

  9.  当該安定型産業廃棄物処分場に近接する丸山ダム湖周辺では、新丸山ダム建設に伴い、建設省が観る∞育む∞憩う≠キーワードに、「四季の散策ルート」、「人道の丘、丸山ダム展望ルート」、「丸山ダム周遊ルート」、「ダム記念公園」をふくむ「歴史散歩道」構想を進めており、将来、公園利用者の増加が見込まれている。
     こうした環境のなかにおける産業廃棄物処分場の存在はふさわしくない。