「御嵩産業廃菓物処理場計画について」
岐阜県知事 梶原 拓 
 貴下におかれましては、このたびの暴力事件で大けがをされたことに対し心からご同情申し上げますとともに、一日も早いご回復をお祈り申し上げる次第であります。県といたしましても、暴力事件は、それ自体絶対に許されないことであり、市長会、町村会とともに、司法当局による事案の早期徹底解明を求める等、事件の再発防止に全力で取り組んでいるところであります。
 さて、本年9月10日付けをもって再度のご照会がありました御嵩産業廃棄物処理場計画については、このたび新たに企画部を窓口として連絡会議を設置し、私が直接関係部局長と協議を重ねたこともあり、回答が遅れたことを深くお詫び申し上げます。本日、別途本事案の処理に関する県の考え方について回答させますが、国土利用計画法等に関する本件の手続きについては、現時点で再考したところ、違法あるいは無効な点はないものと考えております。
 しかし、本事案の処理に際しとった県の措置の中には、ご照会の中でご指摘いただいておりますように、従来の国土庁の指導とは異なる部分もあり、そのことが県の姿勢に対する県民の方々の批判を招く結果につながっている点は率直に反省する必要があると考えております。また、環境庁の通知についても、法律論は別として、その時点でひとます検討中である旨県下市町村にお知らせしておいた方が行政のあるべき姿としてはよかったと考えております。
 顧みますと、当時から廃棄物問題は緊急の課題となっており、不法投棄をはじめ適正な処理が行われない事案が後を絶たない状況にあったことから、県の担当部局としては、廃棄物処理場の現状を直視した結果、本事案の推進が必要と考えたことが、あたかも事業者側に立っているかのごとき印象を与えることにつながったことは誠に残念であります。もとより、県としては、町からの要請に応え、当時から町とともに、事業者との間で協議・調整を進め、事業者の計画を新しい基準に適合した構造に改めさせるなど、法に準拠し、また、県独自の指導要綱に沿って安全性に極力配慮してきたところであります。しかしながら、今日の時点で顧みますと、地域住民の皆様の不安を解消するための努力が必ずしも十分でなかったと言われても止むを得ない点があったことは認めざるを得ないと考えております。
 こうした反省に立って、県といたしましては、本県を取り巻く廃棄物の現状を直視し、現在、行き詰まっている産業廃棄物処理場問題について、県民の総意に基づき、打開策を真剣に見出して行く必要があると考えております。
 そのため、法律・環境の専門家からなる「廃棄物問題検討委員会」を設置し、マスコミ公開の下に会議を開催するなど、でき得る限り県民の前に資料を提供し、一人でも多くの県民の方に事実を正しく知っていただくことが重要であると考えております。
 町長さんにおかれても、ご都合がつけば是非次の廃棄物問題検討委員会にご出席いただければと考えております。
 また、産業廃棄物というよりも生活廃棄物ともいうべき下水道汚泥の処理については、市町村が自ら責任をもって処理すべきであるとの考え方から、市町村長や関係機関の長による「廃棄物問題研究会」が県下5ブロックごとに設置され、下水道汚泥の問題を中心に廃棄物問題に関する議論がなされているところであります。貴町を含む木曽川右岸流域下水道関係市町村においても、岐阜市を中心に同様の議論が行われているところでありす。
 さらに、今後年を追って下水道が普及していくことが確実なこともあり、廃棄物問題を考える県民会議を県下各地で開催し、県民自身の問題としてお考えいただくこととしております。
 なお、産業廃棄物の処理に関する許可等の事務は、「産業廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の定めるところにより処理することになっておりますが、地元自治体の同意要件がないこと、技術基準が画一的なものになっていることなどから、地域の実情に配慮した適切かつ現実的な対応が困難な制度となっております。そこで、県といたしましては、市町村長の同意や条例による上乗せ規制など、地域内の調整について県の裁量権が働く制度に改められるよう、国に法律改正を働きかけております。
 このように、廃棄物対策を総合的な観点から推進していく考えでおりますが、貴町の事案について現状を申し上げますと、都市計画法上の同意見を貴下が保有しておられ、また、計画地域内に町有地があること等を考えますと、当該計画予定地を聞発できるか否かは貴町の判断に委ねられている状況にあります。
 県といたしましては、貴下の下で事実上凍結された状況にある本事案について、貴下をはじめ関係者の方々の不安や疑問を解消していくために最大限の努力を惜しまない所存でありますので、諸事情ご賢察の上、問題解決に向けてご協力いただきますよう心からお願いする次第であります。